コミュニティ基金1終了のご報告と今後の展開
レガシーの実現:コミュニティ基金1最終報告

「このたび、コミュニティ基金1が全国の個人、団体、組織に向けて1130件の助成を完了したことを、ご報告します。本基金は、私たちのコミュニティの基盤を築いてこられた方々と、年長者の皆様のレジリエンス(困難を乗り越える力)への敬意を表するものです。コミュニティを大切に思う気持ちを原動力に、そのビジョンを地域の癒しにつながる取り組みへと形にしてきました。本プロジェクトに関わってくださったすべての方々、そして共に歩んでくださった皆様に、心より感謝いたします。」
―日系カナダ人歴史遺産協会(JCLS)CEO スザンヌ・タバタ
コミュニティ基金1を振り返って
2022年5月21日、元BC州首相ジョン・ホーガンによる歴史的な謝罪は、2012年にナオミ・ヤマモト(Naomi Yamamoto)BC州議会議員の主導で行われた、BC州議会の謝罪を受け継ぎ、1940年代に日系カナダ人コミュニティに対して行われた歴史的過ちに向き合う取り組みの新たな一歩となりました。
JCLSは、過去を尊重しつつ未来への礎を築くという使命のもと、「高齢者の健康と福祉」、「教育」、「地域コミュニティと文化」、「歴史遺産」「記念碑」の5つの柱にわたり、有形・無形の取り組みを進めてきました。
この使命は、2019年から2022年にかけてのBCリドレスの過程で、全カナダ日系人協会(NAJC)が主導した全国各地での対話や枠組みづくりを通して寄せられた、当事者およびそのご子孫の方々の声を反映したものです。
また、エイコ・エビー(Eiko Eby)およびウォルター・クアン(Walter Quan)が作成した基準やガイドラインを精査してくださった、全国の専門家およびコミュニティリーダーからなる諮問委員会の皆様、そして申請書の評価に尽力された審査チームの皆様に、心より感謝申し上げます。
コミュニティ基金諮問委員および審査チームメンバー:
マイク・アオキ(Mike Aoki)、リサ・ドウマエ(Lisa Domae)、エイコ・エビー(Eiko Eby)、ジェニファー・ハシモト(Jennifer Hashimoto)、ビル・ハタナカ(Bill Hatanaka)、ジェイ・ヒラバヤシ(Jay Hirabayashi)、ジョージ・イワマ(George Iwama)、シェリー・カジワラ(Sherri Kajiwara)、キム・カランジ(Kim Kalanj)、メリッサ・カミバヤシ・ステープルズ(Melisa Kamibayashi Staples)、ゲーリー・カワグチ(Gary Kawaguchi)、ミッチェル・カワサキ(Mitchell Kawasaki)、リチャード・コバヤシ(Richard Kobayashi)、ジム・コジマ(Jim Kojima)、ルーシー・コモリ(Lucy Komori)、ニコラ・コヤナギ(Nicola Koyanagi)、ジェフ・マスダ(Jeff Masuda)、ジェニファー・マツナガ(Jennifer Matsunaga)、マイク・マツオ(Mike Matsuo)、カーステン・マカリスター(Kirsten McAllister)、タヤ・ミカド(Taya Mikado)、アレックス・ミキ(Alex Miki)、アート・ミキ(Art Miki)、タニ・ミキ(Tani Miki)、デイビッド・モリツグ(David Moritsugu)、ジャン・ノブト(Jan Nobuto)、ダン・ノムラ(Dan Nomura)、ベブ・オオハシ(Bev Ohashi)、ヤスシ・オキ(Yasushi Ohki)、カーリー・オカムラ(Carley Okamura)、マリカ・オマツ(Maryka Omatsu)、ミディ・オノデラ(Midi Onodera)、ウォルター・クアン(Walter Quan)、ジョーダン・ライリー(Jordan Riley)、アラン・サカイ(Alan Sakai)、ナオミ・サワダ(Naomi Sawada)、ナオ・セコ(Nao Seko)、リアン・トシコ・シンプソン(Leanne Toshiko Simpson)、ビッキー・スノハラ(Vicky Sunohara)、ナオミ・ヤマモト(Naomi Yamamoto)
この全国的なプロジェクトを立ち上げから完了まで担ってくださったJCLSスタッフの皆様に、心より感謝申し上げます。コミュニティ基金マネージャーのラリッサ・ヒゴ(Larissa Higo)をはじめ、レーン・マギャリティ(Lane McGarrity)、レイチェル・マー(Rachael Mah)、ミーガン・コヤナギ(Megan Koyanagi)、チアキ・ヤマダ(Chiaki Yamada)、レベッカ・ボッシュマン(Rebecca Boschman)、エラ・ロー(Ella Law)、ジョン・グリーンアウェイ(John Greenaway)、臨時スタッフのジャン・ノブト(Jan Nobuto)他、関係者各位に心より御礼申し上げます。
全国的な広がり
過去の政府による不当な行為は、日系カナダ人コミュニティを全国へと分断し、家族を引き裂き、生計の手段を奪い、何世代にもわたって育まれてきた文化的、社会的なつながりを断ち切る結果をもたらしました。こうした背景から、私たちは、受領した助成金総額のうち66%を、日系カナダ人生存者健康福祉基金(JCSHWF)およびコミュニティ基金を通じて、全国の日系カナダ人に提供できたことを誇りに思っています。
2023年5月5日にコミュニティ基金のウェブサイトが公開されると、コミュニティから大きな関心と反響が寄せられ、JCLSにはカナダ各地の個人、家族、団体から申請が届きました。以下は、コミュニティ基金1を通じて、全国に配分された多数の助成金の内訳です。
再生に向けた6つの部門

奨学金部門
2回の公募における助成総数:566件
奨学金部門では募集が開始されると、全国のコミュニティの方々から、非常に多くの申請が寄せられました。この大きな反響は、コミュニティにとって教育がいかに重要であるかを改めて浮き彫りにしました。背景には、強制的な立ち退きにより、多くの方々が教育の機会を奪われ、延期や断念を余儀なくされた過去があります。
「昨日、祖母の誕生日に孫である私たち姉妹二人が、日系カナダ人奨学金を受給したことを伝えることができました。祖母は本当に言葉にできないほど誇りに思ってくれています。」
―奨学金受給者

世代間ウェルネス部門
2回の公募における助成総数:270件
世代間ウェルネス部門では、強制的な立ち退きによって生じた家族間の分断を見つめ直すものでした。参加されたご家族が先祖ゆかりの地を訪ね、語りを記録し、対話を重ねることで再びつながりを築き、収容の時代に残された心の傷と向き合っていきました。
「この経験は、思いもよらない形で私たちに影響を与えました。これまで抑え込まれてきた世代を超えるトラウマに向き合うことになり、自分たちのアイデンティティや人生の選択について深く考えるようになりました。私たちは今、家族として、そして一人ひとりとして、ようやく癒やしに向かい、これからどう前に進んでいくべきかを学び始めたところです。」
―ファミリー・シェアリング&ヒーリング助成受給者

インフラ整備部門
助成件数:35件
インフラ整備部門では、日系カナダ人団体向けに建物の改修と資本設備の購入の両方を支援しました。建物の改修では、全国の既存施設の緊急的な改善ニーズに対応し、資本設備購入の助成では、コミュニティ団体が長期的に使用できる設備の追加や更新を支援しました。
「当ホームの入居者は全員日系カナダ人ですが、最新の家具や車両、各種リフトを備えた安全性の高い新居での生活に、心から喜びを表しています。このグループホームは単なる建物ではなく、高齢者が尊重され、温かく、安心して過ごせる環境を築くための重要な第一歩です。」
―インフラ整備助成受給者

コミュニティ・プロジェクト部門
助成件数:93件
コミュニティ・プロジェクト部門では、日系あるいは日系カナダ人文化を広める、コミュニティ主導のプロジェクトを支援しました。これにより、日系カナダ人が互いに、また自分たちの文化やアイデンティティとつながる機会が生まれました。プロジェクトを通じて、草の根のコミュニティ団体が、自分たちの物語を自らの声で伝える力を得ました。
「私たちの祖先はBC州に住み、単に日系であったというだけの理由で、暮らし、住まい、自由さえも全て失いました。子孫である私たちにとって、この支援は何にも代えがたい意味を持ちます。」
―コミュニティプロジェクト助成受給者

スポーツ部門
2回の公募における助成件数:80件
スポーツ部門では、日系カナダ人コミュニティにおけるスポーツの重要性を過去から現在まで称え、アスリートが「がんばれ」の精神を保ちながら活動できるよう支援しました。
「この度の助成と、困難を乗り越える力や根気の価値を大切にしたスポーツ活動の支援に、心から感謝しています。」
―スポーツ助成受給者

アート部門
助成件数:86件
アート部門では、日系カナダ人の子孫であるアーティストに対し、芸術プロジェクトや作品の制作・発表を支援しました。応募資格は、既に活動実績のあるアーティストに加え、基本的な美術教育を修了した新進アーティストも対象となりました。応募者は子孫であることが条件でしたが、子孫ではない他のアーティストとの共同制作も可能でした。
「このプロジェクトのテーマである文化的遺産や記憶、芸術的探求は、これからの私の作品に深く息づいていきます。この探究を続け、これらの物語が人々の心に響き続けるよう努めていきます。」
―アート助成受給者
2028年に向けて
コミュニティ基金1 が成功裏に終了を迎えるなかで、JCLS は助成金の配布から次のステップへと移り、地域に根ざした多くの取り組みの監督や、これまでの活動を後世へと継承していくことに注力していきます。
現在は 、コミュニティ基金2 が進行中で、インフラ整備や地域活動を通じて、影響力の大きい歴史遺産プロジェクトを支援しています。
歴史遺産コミュニティプロジェクト
本プロジェクトは、戦前・戦中・戦後におけるブリティッシュ・コロンビア州の日系カナダ人の経験・体験を伝える、持続的なプロジェクトを支援するためのものです。
対象となったプロジェクトは以下の通りです。
Arrow Slocan Tourism: 日系カナダ人歴史遺産トレイル
Asian Canadian Studies Society: 日系カナダ人レガシー・アーティスト・トークシリーズ II
Campbell River & District Museum & Archives Society: 北バンクーバー島における日系カナダ人の定住の軌跡
District of Lillooet: 宮崎ヘリテージハウス の修復と物語紹介プロジェクト 、1F – 宮崎医師の人生と物語展示、インターンメントの食文化・アート展示
Greater Toronto Chapter, National Association of Japanese Canadians: リーダーシップの軌跡 −ロジャー・オバタの物語
Greenwood Heritage Society: 日系レガシー公園 案内板整備
Japanese Canadian Heritage Committee of the Steveston Community Society: スティーブストンパーク・レガシーウォーク
Maple Ridge Museum & Archives: メープルリッジ 日系カナダ人歴史再活性化プロジェクト
New Westminster Museum and Archives: ニューウエストミンスターに住む日系カナダ人の歴史の現地調査と情報発信
North Island College: バンクーバー島の日系カナダ人
Powell Street Festival Society: 書籍『Onwards: Powell Street Festival (PSF) at 50 Years』
UBC Botanical Garden and Nitobe Memorial Garden: 新渡戸記念庭園の施設整備と文化的価値の向上
University of British Columbia, Asian Canadian and Asian Migrations Studies program, Faculty of Arts: 正義の学位 ― 1942年のUBC日系カナダ人学生76名が遺した不朽の遺産
University of Victoria: 日本庭園 パブリックアートプロジェクト
Victoria Nikkei Cultural Society(VNCS): 先駆者SENKUSHA ―日系カナダ人先駆者の物語
BC州ヘリテージサイト・プログラム
本プログラムは、2026年から2027年にかけての私たちの活動の中でも、特に目に見える形で成果が現れる取り組みの一つです。州内各地で、かつてのゴーストタウンや戦前の漁村・農村跡地が、新たな案内表示や解説展示、修復事業を通して再生され、「見えなかった歴史を可視化する」試みが進められています。
地域主導の取り組みに資金を提供し、日系カナダ人の歴史保存を支援することで、強制移動や強制移住を経験した人々の記憶と歴史遺産が、これ以上見過ごされることのないようにします。かつて忘れられていた場所を恒久的な記憶の場へと変えていく、これらのプロジェクトは、コミュニティの揺るぎないレジリエンス(困難を乗り越える力)と、国家によって制度化された人種差別の深い影響を広く伝え、社会全体の癒しへとつながる道を切り拓いています。
5月には、最大の日系人収容地であるタシュメをはじめ、ガブリオラ島やソルトスプリング島など、今後も2027年にかけて多くの施設が開館予定です。BC州内のヘリテージ・サイトは以下の通りです。
北部・中央海岸地域
ポートエドワード歴史協会(Port Edward Historical Society)
オーシャンフォール向上地区(Ocean Falls Improvement District)
プリンスルパート市(City of Prince Rupert)
ジンオルクス(Gingolx)
ローワー・メインランド地域
メープルリッジ・シードセンター協会(Maple Ridge CEED Centre Society)
メープルリッジ市(City of Maple Ridge)
バンクーバー・日系カナダ人戦争記念碑(Vancouver – Japanese Canadian War Memorial)
バンクーバー日本語学校(Vancouver Japanese Language School)
バンクーバー・マウンテンビュー墓地(Vancouver – Mountain View Cemetery)
ミッション市(City of Mission)
サレー市(City of Surrey)
ヘリテージ・アボッツフォード協会(Heritage Abbotsford Society)
リッチモンド市(City of Richmond)
ボウエン島博物館・アーカイブ(Bowen Island Museum & Archives)
バンクーバー島・ガルフ諸島地域
ガリアーノ島・ガリアーノクラブ(Galiano Island – Galiano Club)
ガブリオラ歴史博物館協会(Gabriola Historical & Museum Society)
メイン島農業協会(Mayne Island Agricultural Society)
ソルトスプリング島日本庭園協会(Japanese Garden Society of Salt Spring Island)
ナナイモ市(City of Nanaimo)
ユークレット&周辺歴史協会(Ucluelet & Area Historical Society)
カンバーランド村(Village of Cumberland)
チマイナス・フェスティバル・オブ・ミューラル協会(Chemainus Festival of Murals Society)
インターンメント(強制収容)関連施設
サンドン歴史協会(Sandon Historical Society)
カスロ・ラングハム文化協会(Kaslo – Langham Cultural Society)
サンシャインバレー・タシュメ歴史協会(Sunshine Valley – Tashme Historical Society)
グリーンウッド市(City of Greenwood)
ホープ・マウンテン屋外学習センター/のぞみ駅(Hope Mountain Centre for Outdoor Learning – Hope Station)
リルエット地区・宮崎ハウス(District of Lillooet – Miyazaki House)
日系カナダ人歴史遺産事業における連携協定
2028年以降もコミュニティの歴史遺産が守られていくよう、JCLSは団体と連携協定を結びました。これらは単なる助成金ではなく、コミュニティの未来を支えるための投資です。
対象団体には、日系文化センター・博物館(バーナビー)、全カナダ日系人協会/ NAJC、日系人収容メモリアル・センター(ニューデンバー)、カナダ日系文化会館:世代オーラルヒストリー・コレクション(トロント)などが含まれます。
教育活動

JCLSは、日系カナダ人の歴史を学べる学習ポータルJapaneseCanadianHistory.comを広く紹介しています。これは、K-12の生徒や教育者に向けて、複雑な歴史をわかりやすく学ぶことのできるデジタル教室です。BC州の教師たちによって開発、プロジェクトチームによって磨き上げられたこのポータルには、厳選された参考資料やすぐに使える授業プランのアーカイブ、そして教員向けの自己学習型オンラインコースが揃っています。
1940年代の強制移動や強制収容、恒久的な財産の剥奪など、日系カナダ人の歴史を学ぶことは、現代に生きる私たちへの大切な教訓につながります。この学びを通して、人権を守ることの重要性を理解する若い世代を育てることができます。
日系カナダ人記念碑

日系カナダ人記念碑の建設進行状況
BC州の州都であり、同州で最も早く日系カナダ人コミュニティが形成された地の一つであるビクトリアで、日系カナダ人記念碑の建設が順調に進められています。約100枚の花崗岩パネルには、1942年の強制移動で 移住を余儀なくされた日系カナダ人およそ22,000名の名前と、1942年から1949年3月31日までに生まれた3,000人以上の子どもたちの名前が刻まれます。全長約300フィート(約91メートル)の「名前の壁」は、美しく整備された公園の中心として設置される予定です。
1942年に西海岸から強制移動させられた人々の名前が、このように一つの場所へ掲示されるのは初めてのことです。人々の名前は、強制移動が行われた地域ごとに並べられ、当時の政府の政策によって失われた家やコミュニティの深い喪失を示しています。1940年代に行われた政策は人種・経済・権力の影響によって推し進められたものでした。
完成した記念碑は、コミュニティや地元住民、全国・世界からの訪問者が集い、困難を乗り越えた人々を称え、追悼し、思いを巡らせる場所となります。また、正義の脆さと人間のたくましさを後世に伝え続ける場として、その地に立ちつづけます。
JCLSは、今秋の除幕式で、当時を生き抜いた方々および子孫の皆さんをビクトリアにお迎えできることを楽しみにしています。詳細は今後数週間から数か月のうちにお知らせします。
感謝 –kansha– と共に
JCLSは2028年の活動終了に向け歩みを進めていますが、私たちの思いは変わりません。コミュニティの皆さんが中心となって築いてきたこれらのプロジェクトが、これから先も大切に未来へと受け継がれていくよう、心を込めて取り組んでいます。この取り組みに携わることができ、日系カナダ人コミュニティとつながれることは、私たちにとってかけがえのない喜びです。皆様、一人ひとりの想いが重なって、ここまで歩んでくることができました。全国各地から温かく支えてくださっている皆様に、心からの感謝を申し上げます。


